下痢について
下痢とは、便中の水分が過剰となり、形が崩れた便が何度も出る状態です。強い腹痛を示すことも多いです。消化管内には摂取した水分と消化管から分泌される水分が合計10リットルほどあります。ここから8リットル程度が小腸で吸収され、その後に大腸でも水分が吸収されるので、便中の水分量は通常100mlほどとなります。下痢では、小腸・大腸で十分に水分を吸収できない、あるいは水分の分泌量が多いことで起こります。原因には、冷えや暴飲暴食など日常的な問題によるものが多いですが、疾患が原因となることもあります。特に、下痢が激しく、症状が慢性化する場合、疾患が原因として疑われます。下痢の原因疾患には、治療せずにいると重篤な状態になる大腸がんや難病指定を受けている潰瘍性大腸炎やクローン病などもあります。下痢症状がなかなか治まらない場合、このような深刻な疾患が発生していないか調べるためにも、早めに消化器内科で検査を受けましょう。下痢が慢性化すると生活の質が低下してしまいます。当院でも下痢の検査・治療を行っているので、下痢症状にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
急性下痢と慢性下痢
下痢は2種類に分けられ、急に起こって2週間以内に治まる急性下痢、下痢や軟便が4週間以上にわたって持続する慢性下痢があります。急性下痢の主な原因は、暴飲暴食や冷え、感染性胃腸炎などが挙げられます。一方、慢性下痢の主な原因は腸疾患や全身疾患などが挙げられ、すぐに治療を行うべき疾患が潜んでいることも多いため、検査を受けましょう。
下痢の原因となる主な疾患
過敏性腸症候群
大腸粘膜に炎症などの器質的異常が見つからないにもかかわらず腹痛とともに長期間にわたり便秘や下痢が繰り返し起こる疾患です。また、膨満感などの症状も伴います。症状によって、便秘型、下痢型、下痢と便秘の交互型に分類されます。はっきりとした原因は分かっていませんが、ストレス、消化器の機能異常、知覚過敏などが関係していると言われています。体質的なものと勘違いされることも多いですが、専門医により治療を受けることで解消が期待できます。下痢型では、急激に腹痛が起こり、激しい下痢症状を示します。過度な緊張や不安を感じると症状が現れやすい特徴がありますが、これは消化管を制御している自律神経が失調することで、消化管機能に影響するためと言われています。病状が進むと、仕事や学業、普段の生活にまで大きく影響を与えることになるため、気になる症状があれば早めに当院までご相談ください。
大腸ポリープ
大腸ポリープが成長すると便の通路が狭くなり、便秘や下痢、血便、細い便が出るなど便通異常が発生することがあります。大腸ポリープは大腸粘膜に発生する腫瘍で、その大半は良性ですが、放っておくと大腸がんに進行することがあります。そのため、検査中にポリープが発見されれば、切除することで大腸がんの発症を防ぐことが可能です。なお、ポリープの発生場所によって症状に違いがあり、巨大化しても症状を示さないこともあります。
感染性腸炎
細菌やウイルスなどの病原体の感染が原因となる腸炎です。腹痛と下痢がよく起こりますが、他にも、血便、吐き気・嘔吐、発熱などの症状を示すことがあります。急に激しい下痢が発生した場合、感染性腸炎の可能性があります。下痢とともに嘔吐も起きる場合、水分補給がままならず脱水状態に陥る恐れがあり、特に子どもや高齢者はそのリスクが高いので注意しましょう。主な原因菌には、ロタウイルスやノロウイルス、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌などが挙げられます。季節によって流行する病原菌に違いがあり、夏季は細菌によるものが多く、冬季はウイルスによるものが多いです。感染性腸炎による下痢が発生している場合、自己判断で市販の下痢止めを飲んでしまうと、病原体や病原体が放出する毒素を体内に溜め込んでしまい、重症化する恐れがあります。水分をしっかり摂取して安静を心がけ、脱水状態に陥った可能性がある場合や、強い症状が継続している場合、早めに当院までご相談ください。
炎症性疾患
潰瘍性大腸炎とクローン病は厚生労働省より難病指定を受けている疾患で、昨今、どちらも発症数が増加傾向にあります。腹痛や下痢、血便などがよくある症状で、症状が起こる活動期と症状が治まる寛解期を繰り返します。寛解期に自己判断で治療を中断してしまうと、活動期に入って強い症状を示し、重大な合併症を招く恐れがあります。どちらの疾患も症状が似ていますが、治療は異なるため鑑別するためには大腸カメラ検査が欠かせません。下痢症状が続いている場合、早めに当院までご相談ください。
下痢の検査
下痢の検査には、血液検査や便潜血検査、便培養検査、便中カルプロテクチン検査、大腸カメラ検査などがあります。大腸カメラ検査は、大腸粘膜全体を直接観察でき、怪しい病変があれば組織採取を行い、病理検査に回すことで様々な疾患の確定診断に繋がります。当院では、最新の内視鏡システムを導入しており、熟練の専門医が検査を担当します。また、鎮静剤を使用してウトウト眠ったような状態で検査を受けて頂けます。大腸カメラ検査に苦手意識がある方も、安心してご相談ください。
下痢の治療
脱水症状が疑われる場合は点滴治療を行います。その後、原因疾患や症状に応じた適切な治療を進めます。暴飲暴食や冷えなど日常的な問題によって一時的に下痢が起きている場合、水分補給をしっかり行う、腸の負担とならない食事を摂る、身体を温めるなどの対応が必要です。また、生活習慣により下痢が慢性化している場合、カフェインや香辛料などの刺激物、冷たい食べ物・飲み物、牛乳、アルコール、高脂肪食を控え、足腰を冷やさないように注意してください。
急性下痢
脱水を予防するために十分に水分を摂取してください。なお、冷たい水分では身体が冷えてしまい、下痢が強くなってしまう可能性があるので、常温あるいは温かい飲み物を飲みましょう。下痢に伴って嘔吐や発熱症状が起きている場合、脱水のリスクが高いので早めに当院をご受診ください。食事は、消化に良いものを少しずつ摂るようにしましょう。例えば、煮込んだうどん、白がゆ、コンソメスープ、すりおろしリンゴなどがお勧めです。急に激しい下痢が起きた場合、感染性腸炎が疑われるため、原因を特定できるまでは感染していると仮定して、手洗い・うがい、消毒などを十分に行いましょう。感染性腸炎と判明した場合、食材に直接触れる仕事、医療・介護関係、子どもに接する仕事をしている方は、症状が治まって3日以上経過し、医師の許可が下りるまでは仕事を休んで頂きます。
慢性下痢
様々な疾患が原因となるため、適切な治療を受けるためには専門医による検査が欠かせません。疾患が悪化すると身体に負担がかかる治療が必要になり、仕事や日常生活にも大きく影響が出る可能性があります。急激な下痢が起きた、下痢に伴って嘔吐や発熱なども起きている、下痢を繰り返すなどの場合、早めに当院までご相談ください。